「救済」
越智 明美
私はこのドレスに表現するために、まず古絹と対話することから始めた。
初めは、ただ「あなたを喜ばせたい」という衝動のほうが強かった。けれど、古絹と向き合い、服と向き合ううちに、いつしか私は、この服を着る人、深田なえという人物と向き合うようになっていた。
「なぜ私は、この人を喜ばせたいのだろう。」
そう問い直したとき、私の目に映る深田なえには、人の痛みを見過ごすことのできない繊細さと、すべてを包み込むような母性が同居していることに気づいた。その姿がとても人間らしく、私は好きなのだと思った。
私は、その繊細さや優しさを、黒のかすれや柔らかなにじみに重ねて描いた。服をつくった方の優しい揺らぎや女性性に寄り添いながら、古絹そのものが持つ表情を生かしていく。滲み、かすれ、偶発的なしずく。その一つひとつが、私の目に映る深田なえという人の姿へとつながっていった。
そして、この作品はドレスだけでは完成しない。深田なえがこの作品を身にまとい、自らの身体で生きることで、初めて「救済」という作品が完成する。
写真家としてのあなたに寄り添い、料理家としての信念に寄り添い、古の文化を大切にしたいという志に寄り添い、歌い手としての表現に寄り添う。
このドレスを着たあなたが、さまざまな人を喜ばせ、誰かの心をそっと救っていく。その姿まで含めて、私はこの作品を「救済」と名付けた。
あなたが誰かを喜ばせること。
誰かに寄り添うこと。
そして、その喜びがまた誰かを救っていくこと。
その人から人へと受け継がれる循環の中で、このドレスは初めて命を持つ。





